とつぜんですが「お屠蘇とは?」と聞かれたら、なんと答えますか?
そもそも、お屠蘇を飲んだことがありますか?
「え?お正月に飲む日本酒のことじゃないの?」って思ってませんか?
じつは「お屠蘇」は薬草酒で、注ぎ方や飲み方に風習があるんです。
なんて偉そうに言ってますが、ボクもお屠蘇は「正月に飲む日本酒」だと勘違いしてました。
と言うことで、詳しく調べてみたので解説していきたいと思います。
では、さっそく解説しますね。
お屠蘇とは?お屠蘇の由来や成分、マナーについて
お屠蘇(おとそ)っていったい何なのか?
まずは、そこから説明していきますね。
日本名門酒会のホームページに、わかりやすい説明があります。
引用させてもらいます。
「お屠蘇」とは、酒やみりんで生薬を浸け込んだ一種の薬草酒。正式には屠蘇延命散と言います。
~中略~
いずれにしても邪気を払い無病長寿を祈り、心身ともに改まろう、という願いを込めていただく、お正月ならではのセレモニー酒です。
お屠蘇って、お正月に飲む日本酒のことだと思ってませんでしたか?
正確には「酒やみりんで生薬を浸け込んだ一種の薬草酒」なんですって。
じゃあ、お神酒(おみき)って何?
うちの実家はお正月に日本酒を飲み、それをお神酒と呼んでました。
お神酒とお屠蘇は、同じものなんでしょうか?
「お神酒」は、神道において「神に供えるお酒」のこと。
そう考えると、お正月に飲むお屠蘇を「お神酒」と呼ぶのは少し違うのかもしれません。
それにしても「お屠蘇」とは、屠ったり蘇ったり、すごい名前ですね。
屠る(ほふる)って、敵を打ち負かしたり命を奪うことですよ?
なぜ、お正月に飲む薬草酒に「お屠蘇」なんて名前が付いてるんでしょう?
調べてみると諸説あるようで「屠蘇」のいろんな語源・由来が載っていました。
いくつか、ご紹介します。
屠蘇の語源・由来とは?
- 「蘇という名の鬼を屠る」説
- 「邪気を屠り、魂を蘇らせる」説
- 「中国の西方に伝わる薬草の名前」説
いずれにしても「無病長寿」を願って飲むんだな、ということがわかる由来ですね。
お屠蘇の中身って何が入ってる?お屠蘇の原料
さて、お屠蘇が薬草酒であることはわかりました。
では、その「薬草」とは具体的に何を指すのでしょう?
薬草以外に、何が入ってるのでしょう?
お屠蘇の中身は、こんな感じになってます。
原材料 | 備考 | |
---|---|---|
屠蘇延命散 | 桔梗(キキョウ) |
|
防風(ボウフウ) |
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山椒(サンショウ) |
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肉桂(ニッケイ) |
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白朮(ビャクジュツ) |
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陳皮(チンピ) |
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ベース | 日本酒 |
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本みりん |
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赤酒 |
|
「屠蘇延命散(屠蘇散)」のレシピはいろいろあって、5~10種類ぐらい調剤するようです。
上の表は、その一例になります。
薬草を浸すベースは、日本酒や本みりんを使います。
両方をお好みでブレンドすると、甘味やまろやかさを調整できます。
日本酒か本みりん、どちらか片方を使って作ってもOK。
熊本のように、赤酒というお酒を使う地域もあります。
運転できる?お屠蘇のアルコール度数
さて、お屠蘇のアルコール度数はどれぐらいあるのでしょうか?
これは、お屠蘇のベースにどのお酒を使うかによります。
参考まで、目安のアルコール度数を書いておきますね。
- 日本酒 ⇒ 15~20度
- 本みりん ⇒ 12~15度
- 赤酒 ⇒ 11~13度
見ていただいたらわかるとおり、上述の3つはどれをベースにしても酔います。
車を運転したら「飲酒運転」で捕まります。
「こんなにアルコール度数が高いお屠蘇は、無理」と言う方。
日本酒には、アルコール分10%以下の邸アルコール商品もあります。
たとえば、京都伏見の増田徳兵衛商店さんの「稼ぎ頭」というお酒は8.5%です。
伏見らしい上品な滑らかさと、フルーティな甘味と酸味が美味しい日本酒です。
アルコール0%のお屠蘇が作りたければ、ノンアルコール清酒を使う方法があります。
月桂冠さんから“月桂冠フリー”という日本酒テイスト飲料が出てますよ。
アルコール0.00%、カロリーゼロ、糖質ゼロです。
ちなみに、みりん風調味料もアルコール分1%未満です。
でも、味わいが本みりんと全然違うので、お屠蘇のベースには向きません。
マナーはある?お屠蘇のしきたり
さて、お屠蘇って注ぐときや飲むときの作法はあるんでしょうか?
お屠蘇のセットの盃って、大中小の3つありますよね?
あれ、どうやって使うんでしょう?
まずは、屠蘇器の名前から見てみましょう。
屠蘇器は、こんなものがセットになってます。
屠蘇器のセット内容
- 屠蘇台(とそだい)
- 盃台(さかずきだい)
- 盃(さかずき)
- 銚子(ちょうし)
- 銚子飾り(ちょうしかざり)
まず、お屠蘇を入れる銚子と、お屠蘇をそそぐ盃。
盃は盃台に乗っていて、盃台と銚子は屠蘇台に乗せます。
この4種類を一組にして屠蘇器と呼び、銚子には水引の銚子飾りを付けます。
図解にすると、こんな感じです。
つづいて、屠蘇器の置き方や飲み方も説明しますね。
屠蘇器の置き方
まず、屠蘇器の置き方から。
屠蘇台に書かれている絵の向きに対し、左側が盃台と盃。
右側に銚子を置きます。
婚礼では銚子が2つになるので、盃を間にして左右に銚子が置かれます。
屠蘇器の使い方(注ぎ方と飲み方)
つづいて、お屠蘇の作法を説明します。
お屠蘇を注ぐとき、正式には大中小3つの盃を使います。
でも、それでは飲み終わるまで時間がかかるので、略式で中盃のみ使う方法もあります。
ここでは、参考例をお伝えしますね。
まずは、ポイント解説から。
以下の6つを押さえておきましょう。
- おせち料理やお雑煮を食べる前に飲む
- 東の方角を向いて飲む
- 無病息災や長寿を願って飲む
- 飲むときに文言と唱える
- 最年少者から最年長者の順に飲む
- 厄年の人は最後に飲む
お屠蘇は最年長者や家長が注ぎ、若いものから順番に飲みます。
飲む人は「一人これを飲めば一家苦しみなく、一家これを飲めば一里病なし」と唱えます。
厄年の人は、みんなから厄払いの力を分けてもらう意味で最後に飲みます。
年少者から飲む理由は、いろいろ言い伝えがあるようです。
いくつか、ご紹介しておきましょう。
- 子供の将来の平安を願う
- 年少者から年長者へ精気を渡し長寿を願う
- 毒見のなごり
ど、毒見のなごり!?
つづいて、注ぎ方と飲み方の流れです。
略式の方法(中盃だけ使う方法)を説明しますね。
お屠蘇の注ぎ方と飲み方
step
1大盃と小盃を盃台からおろす
step
2家長が中盃が乗った盃台を持ちあげ、飲む人に差し出す
step
3飲む人は両手で盃を受け取る
step
4家長は盃台を屠蘇台に戻し、銚子を持ってお屠蘇を注ぐ
step
5飲み手がお屠蘇を飲む
step
6家長は盃台に持ち替え、飲み手は中盃を盃台に返す
step
7家長は中盃を軽くふき、次の人に盃をすすめる
お屠蘇は、注ぎ方にも飲み方にも作法があります。
両方、説明しておきますね。
注ぎ方の作法
飲み方の作法
いやぁ、じつに奥深いですね。
調べてみるまで、ぜんぜん知りませんでした。
わが家では、お酒が弱い人から順に小中大と盃を受け取ってました。
父(家長)が大盃、母が中盃、子が小盃という家もあるようです。
今年は、上述の略式でやってみたいところ。
お屠蘇は地方によって違う?お屠蘇の地域性はある?
お屠蘇って、なんだかすごく作法に地域性がありそうですよね。
そこで、20人に「地元のお屠蘇って、どんなふうに飲んでる?」って聞いたんです。
そしたら、みごとにバラバラの回答が!
地域性どころか、家庭により違う感じでした。
たとえば、お屠蘇のベースに使うお酒。
「日本酒」が圧倒的に多く「本みりんのみ」や「日本酒+本みりん」もいました。
中には「日本酒+養命酒」と回答した人(鹿児島県薩摩川内市出身)とか。
「日本酒+白酒」と回答した人(福島県福島市出身)とかもいましたよ。
おどろいたのは、飲む順番。
一般的に言われている作法と、真逆の結果に。
「年長者から年少者の順に飲む」と回答した人が一番多かったです。
ちなみに、今回の回答者の中では地域性は感じられませんでした。
「いつまで飲む?」という質問にも、地域性は感じられず。
「元旦のみ」または「3日まで」飲んでるという結果に。
昔は「松の内」まで飲んでたそうですが、忙しい現代社会を反映してますね。
引っ越しは簡単にできるし、近所付き合いは希薄になってるし。
風習は、残そうと努力しなければ無くなってしまいそう。
日本酒もかかわってくる文化だけに、無くなってしまうのは惜しいところですが・・・。
ベルメゾンの研究所が、気になる調査をしています。
2016年から2017年の年末年始、お屠蘇を飲んだと回答した人の割合は以下のとおり。
全体(n=4263) | 16.3% |
---|---|
20代(n=210) | 7.6% |
30代(n=1162) | 14.1% |
40代(n=1762) | 17.0% |
50代(n=957) | 18.9% |
60代(n=172) | 34.3% |
う~む、少ないですね。
「熊本では赤酒」のような風習がなくなるのは、ちょっと惜しい。
そう感じた人は、ぜひ郷土のお屠蘇のしきたりを調べてみてはいかがでしょう?
次のお正月はお屠蘇を飲もう、そうしよう。
お屠蘇を作ってみよう!お屠蘇の作り方
では、お屠蘇絶滅の危機を救うため、お屠蘇の作り方を学んでみましょう。
「屠蘇散に使う生薬なんて、どこに売っとんねん!」って思った方、ご安心を。
すでに調剤してある屠蘇散が売ってます。
それを使えば、寝てる間にハイできあがり。
市販のお屠蘇の素が販売されている
屠蘇散は、年末になると薬局やスーパーなんかで買えます。
といっても、販売店がどんどん少なくなってます。
うちの近くのドラッグストアも「今年も置くか、わからない」って言ってました。
そんなときは、アマゾンか楽天!探し回らなくて済むので、便利ですね。
ティーバッグみたいになってて、1包200~300円で買えます。
メール便で届く商品は、送料無料のものもあります。
ということで、わが家もネットで材料をそろえ、初お屠蘇に挑戦しようと思います。
お屠蘇のレシピと作り方
さて、お屠蘇のレシピをもういちど。
以下のものを準備します。
- 屠蘇延命散(屠蘇散)
- 日本酒
- 本みりん
「日本酒+屠蘇散」のお屠蘇は、少し飲みにくいそうです。
本みりんを使わない場合は、お砂糖を少し混ぜるといいそうですよ。
作り方は、カンタン!
お屠蘇の作り方
step
1容器に日本酒と本みりんをブレンドしてお好みのベースを作る。
step
2屠蘇散のティーバッグを浸し7~8時間放置する。
step
3屠蘇散を取り出し味見する。
step
4必要であれば本みりんや砂糖を加え味を調整する。
step
5銚子に移し元旦の朝に飲む。
ね、簡単でしょ?
ポイントは、日本酒と本みりんのブレンド割合でしょうか?
ここにも、各ご家庭の秘伝がありそうですね。
美味しいお屠蘇の「日本酒:本みりん」の配合は?実際に作ってみた
さて、美味しいお屠蘇を作りたいですよね。
日本酒と本みりんの比率は、どれぐらいがいいんでしょう?
実際に作って試してみました。
準備したものは、以下のとおり。
- 宝酒造 松竹梅 本醸造
- 宝酒造 寶本味醂(たからほんみりん)
- 屠蘇散
京都伏見を代表する、縁起がいい名前のお酒と本みりんを用意しました。
日本酒と本みりんの割合は、以下の4種類を準備しました。
- 日本酒:本みりん = 180ml:0ml
- 日本酒:本みりん = 120ml:60ml
- 日本酒:本みりん = 90ml:90ml
- 日本酒:本みりん = 60ml:120ml
全部、日本酒と本みりんの合計が1合になります。
さて、どれが一番美味しいでしょうか?
割合どおりグラスに入れると、こうなりました。
色が、グラデーション。
屠蘇散を入れ、放置すること7時間。
養命酒?八角?
いかにも生薬って感じの香りがすごいです。
茶色が少し濃くなってますね。
味見してみると・・・これは、本みりん多めがようさそうですね。
本みりんが少ないほど、薬草酒っぽさと独特の苦みを感じます。
今回準備した4つの中では「日本酒:本みりん = 60ml:120ml」が一番飲みやすいかな?
だけど、かなり甘いです。屠蘇器の平盃で少しだけ飲むのが、ちょうどいい量ですね。
だんぜん、本みりんの方が美味しいよ。
個人の好みもあるので、最初は本味醂を入れず日本酒だけで作るのもありですね。
漬け終わったあと、じょじょに本みりんを足していけば失敗しないと思います。
それにしても、実験で4合もお屠蘇を作っちゃったけど、どうしよう。
なんか、豚の角煮の調味料に使いたい感じの味わい。
料理に使いましょうかね。
お屠蘇って購入できるの?通販で買えるお屠蘇や屠蘇器
じつは、屠蘇器はもちろんお屠蘇の既製品も通販で買うことができます。
さっそく、ご紹介しますね。
お屠蘇の通販
日本酒名門会では、既製品のお屠蘇として“春鹿 延壽 屠蘇酒”を紹介しています。
“春鹿 延壽 屠蘇酒”の概要は、以下のとおり。
分類 | リキュール |
---|---|
アルコール分 | 12% |
原材料 | 清酒、本みりん、山椒果皮、みかん皮、桔梗根、浜防風、桂皮 |
エキス分 | 16% |
このお屠蘇は、奈良県の今西清兵衛商店さんの日本酒と本みりんを使っています。
屠蘇散も、奈良の老舗・菊岡漢方薬局さんのものを使ってます。
自分で作るのが面倒なら、こういう商品が便利ですね。
容量が300ml(約1.6合)なので、家族4人が盃で1杯ずつ、三が日楽しめます。
お屠蘇の代用品
お屠蘇の代用品として使われてるものも、調べてみました。
日本酒、本みりん、甘酒など。
ネットで探してみると、いろんなお酒やノンアル飲料が使われてるんですね。
いくつか、参考にピックアップします。
- 日本酒
- 赤酒
- 焼酎
- 本みりん
- 養命酒
- 甘酒
屠蘇散を入れずに日本酒を飲む「お神酒スタイル」のご家庭も多いようです。
お正月に日本酒を飲むなら、おめでたい名前の銘柄がいいですよね。
いくつか、ピックアップしてみましょう。
開運、来福、招福神、延寿千年、鳳麟、松竹梅。
どれもお正月にふさわしい名前ですね。
来福酒造さん、越後鶴亀さん、招徳酒造さん、月桂冠さん、宝酒造さん。
社名まで、福々しい。
お子様が飲む用なら、米麹で造った甘酒がいいですね。
ノンアルコールだし、酒粕の甘酒より口当たりがやわらかです。
不動の人気をほこる甘酒といえば、こちら。
アマゾンを始め、いろんなサイトで高評価を獲得してます。
赤酒は熊本の地酒で、醪(もろみ)をしぼる前に木灰を入れ酸を中和したもの。
独特の芳香と微アルカリ性が特徴で、時間経過とともに赤色になるそうです。
地方やご家庭によって、お正月に飲むお酒っていろいろあるんですね。
あなたのところは、どうでしょうか?
お屠蘇器セット(お屠蘇道具)
屠蘇器も、いろいろありますよね。
漆器が多いようですが、磁器や陶器、ガラスのものもあります。
ピンタレストにあった屠蘇器を集めてみましたので、貼っておきますね。
屠蘇器は、アマゾンや楽天でも買うことができます。
相場はピンキリで、5千円ぐらいから10万円を超えるものまであります。
中には100万円を超えるものも・・・。
さすが工芸品、って感じですね。
選択肢がかなり多いので、選び甲斐ありますよ。
ご予算に合う、お気に入りのデザインや材質のものを探してみてください。
屠蘇器の代用品
「屠蘇器はお正月しか使わないし、もったいない!」とお考えの方。
お気持ち、わかります。
そんな方は、片口とお猪口でいいですよ。
お正月の雰囲気に合うデザインで、気に入ったものを買ってみてはどうでしょう。
ポイント
片口とお猪口の写真も、ピンタレストから集めてみました。
すっきり美しいデザインは、見てるだけでウットリしますね。
片口とお猪口も、アマゾンや楽天で買うことができます。
これなら、日常的に使えるし。
屠蘇器より購入しやすい価格なのが、うれしいですね。
お気に入りを、探してみてください。
酒器専門の工房・今宵堂
ちなみに、ボクは酒器専門の工房・今宵堂さんで片口と平盃を買いました。
「白瓷片口」と「白瓷平盃」という名前の商品です。
あ、それと「白瓷燗徳利」も。
1年待ちという人気ぶりですが、待った甲斐ありました。
大量生産の白磁にはない温かみと、清らかなほど凛としたデザインが気に入ってます。
京都市北区にあるんですけど、工房まで行けない方はメールで注文できます。
ご夫婦で営んでおられるんですけど、とても素敵な方ですよ。
詳しい注文方法は、こちらをご覧ください。
まとめ
お正月に飲むお酒といえばお屠蘇ですが、どういうお酒かあまり知られていません。
じつは「お屠蘇」は薬草酒で、無病息災や長寿を願い作法にのっとって飲みます。
お屠蘇に浸す薬草は「屠蘇(延命)散」という名前で、薬局や通販で買えます。
お好きな日本酒や本みりんに浸すだけでなので、カンタンに作れます。
お屠蘇を飲む人は「6人にひとり」らしいので、この雅な風習の継続に貢献したいところ。
日本酒ファンとしても「ハレの日に日本酒を!」の精神で、チャレンジしたいですね。